父が果たした役目

2020年05月01日

京都の北宝が池に国立京都国際会館があります。
学校薬剤師の会報に父が
『薬剤師と水』と題した国立京都国際会館開館前日の 夜から朝にかけての出来事の文章を書いています。
以下 紹介します。

ー昭和41年(1966)5月夜8時ごろ電話があり、
「この度できる京都国際会館です。
今建築造園が完成した直後ですが、 昨日来の雨で完成したての池に泥水が流れ込み、
池の水が赤茶色の汚水となり困っている。
昨日から明礬(ミョウバン)を多量投入したが、ダメである。
実は明日米国から初めて高官が来賓としてお見えになるので、
それまでに美しい池にしておきたい」とのこと
「何か良い方法がないか、しかも池にはすでに高価な鯉が数百匹入れてある。
鯉を殺さずに一刻も早く水を澄ましてほしい」と深刻な声である。

さあ 大変
薬剤官であった頃の水に関する書類や学校時代の無機の本を出して調べたが・・・
責任重大 明礬(ミョウバン)・硫酸バンドが水を透明にする一番適当な薬品だ
という結論に達しました。
明礬(ミョウバン)がダメだったとのことで硫酸バンドをさらに調べてみると
硫酸アルミニウムAl?(SO?)18H?Oである。
毒性はどうか、鯉には大丈夫かが問題である。

中略
念のため蹴上の浄水場に相談したり
夜中に大量の硫酸アルミニウムAl?(SO?)18H?Oの在庫のある
工業薬品卸を探しまわり 結局
万策尽き自分の乗用車コロナを利用して25kg×25袋を  運ばねばならぬはめになった。
1回最大8袋 結果的には夜中3回宝ヶ池まで往復
全量を池に投入し終えたのは午前4時30分であった。
あたりは未だ暗闇である。
会議場の事務局の人と懐中電灯で水面を照らしてみると、
鯉は確かに元気で生きていた。
5時すぎ白々と夜明けとともに池の水の濁りは潮の引くごとく
完全に底まで透き通り
澄み切ってしかも多くの鯉が元気に泳ぎ回っているではないか。
私は思わず事務局の方と握手した。
朝日が上り始め、小鳥も美しい声でさえずっている。
あの感激は小生一生忘れることの出来ない一瞬でした。

追:乗用車コロナは余り重い荷を積んだのでシャフトが折れ廃車となりましたが、
会議場とは今でもお薬を購入、お取引いただいております。

☆父は京都府知事賞 受賞
1993年厚生大臣賞受賞(小泉純一郎厚生大臣)
瑞宝章受章などの受賞歴がありますが
京都国際会館開館前夜の活躍に私から一つ勲章を送りたいと思います。
よく力を尽くして頑張りましたね。

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